扇風機の羽根のホコリと流体力学
こんにちは。今回は扇風機について。
最近暑くなってきたので、一日中回しっぱなしなんてこともあるかと思います。
ここで一度扇風機を止めて羽根に注目。
ホコリがついていませんか? 多分ついてるはずです。
今回はこの現象と流体力学の関係を述べていきます。
よくよく考えてみると
ちょっと考えてみると、ホコリがついているのはおかしい。
なぜなら羽根の回転と風でホコリが飛んでいくと考えるのが普通だからです。
扇風機の風で紙さえ飛ぶのだから、ホコリがとんでもおかしくはない。
ではなぜ羽根にホコリが残っているのか?
粘性の証拠
ホコリが羽根に残るのは、空気の粘性の証拠であるといえます。
(正確には粘性流体の固体表面ー流体の境界条件)
粘性とは、流体の流れにくさを指します。
粘性が高いほど、流体はドロドロしています。(例:蜂蜜)
ある固体(=羽根)と粘性流体(=空気)の境目付近を想像してください。
固体が動くと、その表面周辺の粘性流体はドロドロしているので引きずられます。
よって、固体の速度=周辺の流体の速度になると予想できます。
(特殊な状況意外ではこの仮定は正しいと示されています)
したがって、羽根の表面近傍の流体は羽根に対して静止しています。(相対速度ゼロ)
空気も羽根と一緒に動くから、表面のホコリは流されることはないのです。
流体力学について
ここで少し流体力学について紹介します。
流体力学では文字通り流体について調べる学問ですが、複雑です。
粘性流体の基礎方程式「ナビエ・ストークス方程式」はミレニアム懸賞問題の一つに数えられています。そのくらい複雑で、厳密に解くのは不可能です。
1:密度の変化
2:粘性の効果(2種類)
3:圧力の変化
4:内部の力の変化(≒重力)
これら全ての効果を取り入れ、流体の各点について計算するのは無理に近いです。
乾いた水の物理
全ての要素を考慮して計算するのは不可能ですが、ある程度の近似ができます。
1:密度は流体のどこでも一定(非圧縮性流体)
2:粘性なし
ここまでくると、上手く計算できるようになります。
有名な「ベルヌーイの定理」が導かれます。
しかし粘性を無視すると、現実にあるはずの効果がなくなってしまうことが多いです。
(ダランベールの背理などなど)
扇風機のホコリも、粘性なしでは説明できません。
簡単にはなったけど、実際の流体とは程遠いことから、粘性なしの流体は「乾いた水」と皮肉られています。
今回は扇風機の羽根のホコリから、流体の粘性について紹介しました。
<詳細な流体力学の理論についてはこちら(自作)>
<参考文献>