多数決は破綻している その2

*PC版ページ推奨

前回の記事はこちら。

kou220284.hatenablog.jp 

参考文献 

はじめてのゲーム理論 (ブルーバックス)

はじめてのゲーム理論 (ブルーバックス)

  • 作者:川越 敏司
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: 新書
 

 

 

不可能性を回避する方法

前回述べたように、投票制度はコンドルセパラドックスを回避しようとするとアローの不可能性定理に阻まれてしまいます。この状況を打破する方法はあるのでしょうか?

投票をゲームと考える

コンドルセパラドックスにおける投票は、言うなれば「並び替え」です。

つまり、今まで「各人の順位をちょうどよく考慮して、全体の選考を決める」という操作の不可能性を議論していました。

ゲームの構造を変える

ここで、今まで議論していた「並べ替えゲーム」を違うゲームに置き換えます。

点数付けゲーム

ここでは、新たに「点数付けゲーム」を考えます。

ルールは簡単。選択肢に点数を割り振るだけです。

 

点数を付けさせて、集計すれば「堂々巡り」を回避できます。さらに、前の投票についての5つの条件も満たせそうです。

 

このような投票制度の例としてはルイス・キャロルの投票制度」などがあります。

ギバード=サタースウェイトの不可能性定理

新たな問題

ここで「点数付けゲーム」の新たな問題が発生します。

それは「戦略的操作」です。

 

個人が投票をする利得とはなんでしょうか?

それは、自分の選考を反映させることです。

 

そして、自分の選考を反映させるために、選考とは違う点数をいれるケースが発生してしまいます。結果に繋がるのは選考ではなく点数だからです。

 

(例)

Aの選考:X→Y→Zであるのに対し、入れた点数は X>Z>Yだった。

結果Yが1番になることが阻止され、Xが1番になり当選した。

 

投票と戦略的操作に関しては、「ギバード=サタースウェイトの不可能性定理」が成り立ちます。

 

「戦略的操作をなくすことができるような投票制度は、独裁制しかない」

 

アローの不可能性定理のときと同様に、「フェアな投票を目指すと独裁制になる」という皮肉な結果が導かれます。

希望はないのか

ここまで不可能性に阻まれてしまうと、投票は無意味なのではないかと思ってしまいますが、希望はあります。

定理の仮定

以上の不可能性定理は本質的には

「個人の利得と皆の幸福の間には必ず不釣り合いが生じる」ということに等しいです。

(専門的にはナッシュ均衡とパレート効率性の協調問題」と呼ばれます)

 

そしてここでの重要な仮定は

「個人は必ず自分の利得を最大化するように行動する」ということです。

この仮定がないとき、不可能性定理の壁にひびが入ります。

単峰的な選考

「単峰的な選考」とは、「一定以上の傾向がある選考」のことを指します。

コンドルセパラドックスを回避できる程度のある傾向性があると、上手く不可能性を逃れることができます。

今までは投票される側は何もしないと仮定しましたが、実際には投票者に投票を促すことが普通です。この行動が単峰性を生みます。

 

したがって、選挙などは十分に不可能性を破っています。安心して選挙にいきましょう。

まとめ

今回は2回に分けて「多数決(投票)」について紹介しました。

理想的な状況では、多数決は破綻していることがわかりました。

 

ゲーム理論は、すでにゲームの枠を超えて様々な分野に適用されています。

特にゲームに量子の概念が取り入れられた「量子ゲーム」はとても興味深いです。

(勝ち続けられるギャンブルを考えたりすることができる)

 

ゲーム理論、勉強してみてはいかがでしょうか。